最近急騰している原油価格について、その決定のメカニズムを多方面から平易に解説する入門書。やや散漫な印象も受けるが基本的な情報は網羅している。あとがきにあるように著者の専門である経済分析(価格予測)以外は常識的な見方にとどめている。
価格決定のメカニズムは
- メジャーによる支配
- OPECの時代
- 市場の需給バランスで決定(現在)
と変遷してきた。現在は行き過ぎがあるとブレーキがかかる市場メカニズムが働くはずとする。最近の急騰も物価の補正を入れた実質価格でみると第一次オイルショックのようなインパクトはない。
生産面ではOPECの生産量は全世界の50%に達っしていないが、一時よりは回復。国別ではロシアが1位サウジに迫る勢い、アメリカは3位だが、ピークを過ぎたか、量的には減少傾向。カナダのオイルサンドが注目される。
需要サイドで見るとアメリカがダントツの1位で1/4。中国(8.3%)が日本(6.5%)を抜いて2位。BRICsやタイなどの他の新興国で伸びが著しい。
オイルマネーについては産油国が輸入品を増やしており、または金融投資により世界経済に還元されており、肯定的にとらえることができる。
最後に価格予想だが、
上限価格A(原油依存度による。これ以上上がると代替エネルギーへの転換が進む)= 92ドル
上限価格B(天然ガスとの熱量あたりの差異から求める) = 85ドル
下限価格B(天然ガスとの熱量あたりの差異から求める) = 53ドル
下限価格A(原油のコストから) = 14ドル
原油は価格弾性値が小さいので非常に幅広いレンジとなるが、中心は50−80ドルと予想。
- 作者: 芥田知至
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2006/04/11
- メディア: 単行本
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