チューバはうたう

表題作を含め3作の中編で構成。主人公の女性が中学時代のブラスバンドで単に大柄な体格からあてがわれたチューバ。高校、大学、そして社会人の現在と日常の生活に追われながらも、自己アイデンティティのためには欠かせぬ存在となり、休日には河原で一人奏でる。ある日ラジオで耳にしたジプシー音楽での四重奏にあこがれ、ラストでそれに巡り合う。若い女性あるいはすべての人の人生の理想と現実との悩みを繊細にかつ饒舌に描いた秀作。同梱されている東北の田舎町でのプラネタリウム上映の一夜とそこに集う人々を題材とする「百万の星の孤独」もいい。

チューバはうたう―mit Tuba

チューバはうたう―mit Tuba