脳から見るミュージアム

対談。脳科学者と博物学者。どちらかと言えば博物館への誘い、啓蒙書。博物館の歴史、バックヤードの事情なども紹介。博物館の価値は表の展示ではなく、裏の所蔵品、公式には博物館資料にある。欧米中心の価値観には疑問も呈する。人類にとってかけがえにない財産。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

生きるとか死ぬとか父親とか

連作エッセイ。70代後半の父親と40代の娘(作者)。離れて暮らすが、亡くなった母の墓参等で時折一緒になる。若い頃からの父親の人生を掘り起こす形。事業に失敗、豪邸を手放す結果になるが、特に女性には魅力的な人のようで、人物像自体が面白い。娘としての反発と愛情もよく出ている。愉しみながら考えさせられる一冊。

 

 

 

新L型経済

対談の形を取るが、田原氏は聞き手。富山氏の日本の経済対策に関する主張。G(グローバル)型企業は伸びしろが少なく、これからはL(ローカル)型に主軸を置くべし。具体的には地方の中核都市に東京から人口を移動させ、雇用と需要を創出する。生産性の低いサービス産業をDXにより活性化する。この部分は伸びしろが大きく、失われた中産階級の復活にもつながる。企業は旧態依然の日本式経営から脱却、新憲法下でのCXを目指す。実践重視の主張は耳の痛い部分もあるが、説得力に富む。

 

-グローバルIT企業は雇用を生み出さない。

-L型産業は規模ではなく密度の経済性

-企業の成長の源泉は新陳代謝力。日本は致命的に劣る。

 

 

ルポ川崎

川崎の現代若者像を探るルポ。特に駅の海側は歓楽街であり暴力が支配する。多国籍であり、へイトスピーチに悩まされる。若者たちは男女ともに年少のころから不良となり、薬物や犯罪に手を染める。行きつく先は暴力団か水商売がお決まりのコース。ラップが流行し、その歌い手が地元のヒーローとなり状況を変える。自ら更生し後輩を導く。体当たり取材で実像に迫り迫力のあるルポ。ある意味知らない世界。

 

 

それでも陽は昇る

主人公は神戸の小学校教師。東北への応援派遣を終え、地元に戻る。二つの震災を如何に後世に伝えるかが主題。世代は変わりかっての教え子たちがそれぞれの立場で奮闘する。形ばかりの復興ではなく、人々の想いをどう吸い上げ実現していくか。できなかったこと、失敗の経験を伝えることが重要との結論。3部作の完結編。後日談的な色彩となった。それだけ震災が過去のものになりつつあるというしるしか。風化させてはいけないのだろうが。

 

 

 

累々

恋愛小説の連作。ヒロインの美大生の恋愛遍歴、同時進行で複数の男性との交際が描かれる。根底の心情は上手く理解できない。これは世代差によるものか。レベルは高くプロの作家に遜色ないが、女性側の書き分けがやや不十分。どうしても女優としての作者のイメージが先行する。実力を拝見しましたということで良いか。

 

 

日本の構造

副題にあるように統計データから現代日本の状況と問題点を浮き彫りにする。特に戦後の履歴データが示されるので解り易い。高度成長から安定成長その後の長期低迷と日本経済と社会の劣化は明らか。簡単に言えば普通の国。幻想は断ち切る必要がある。今後の課題は人口問題と格差社会。どこを目指すのか根源が問われる。競争を強いる経済的な繁栄はあきらめ個性豊かな多様性を求めることが現実的か。